灯台に住んでしまうのと同じだよ

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「先月さ! 忘れたのかい? ほら、ビュッフェで君がサラダを山盛りに三皿も持ってきた時だよ…」  そう言われても、全くピンと来ないし、よしんば思い出せたとしても、きっと関連性は理解できないだろう。いつもあの人は説明してくれるのだけど、全く“説明”になってやしないから。 「…兎も角、先生は今日、気が付いたんですね。それで?」  続きを促せば、あの人はまた嬉々として話し出す。 「これって、すごい発見だろう? たった一つ、正しくそびえ立つ答えが、僕の瞳に光を放ってくれる限り、迷わずそこを目指せば良い。道すがら、靴を落としても構わない。頬を擦っても構わない。  だって、僕は、君の元へ帰れたら、それが総てなんだから!」  その言葉に、私は何か得体の知れない熱を感じた。これは、いつものヤツとは少し違う。話す声も普段より高いし、ポンプで押し出されるように出てくる言葉と息は、枯れる気配が微塵もない。  心臓が急に痛くなって、私は携帯電話を片手から両手持ちに変えた。 「素晴らしいじゃないか! 辞典で引けない戸惑い、地図に載っていない怒り、式で解けきれない言葉を、恐れなくて良いんだ、僕は! 人生という道を、最高に楽しく、自信を持って進んでいける。君という目印を、目的地を、見失わない限りは。     
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