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【 part 3 】
始業式には満開だった桜が、もうすでに青葉を見せだした。
ほとんどの生徒はもう、自分のクラスに馴染めているだろう。
そう・・・私以外は。
女子A「長瀬くぅん!おはよぉ///」
長瀬「おはよ・・・あれ?髪切った?」
女子A「うん///長瀬君が好きかなぁって///」
長瀬「うん。似合ってるよ。可愛い。」
女子一同「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「・・・。」
長瀬を囲む輪から遠く離れた席に座っているのが、私、白井 雪菜。
今でも、冷血漢というあだ名は消えていない。
でも、そんなことがどうでもよくなるような事が起こった。
つい先ほど、不覚にもこのキラキラ王子に助けられてしまったのだ。
ありがたいよ?
ありがたいんだけど・・・屈辱的。
何か・・・悔しい。
耳元で『可愛い』だなんて・・・。
まだ少し、耳が熱い。
だって、あんなの慣れてないんだもん!
いや違う。
長瀬が慣れ過ぎてるの!
大体、髪を褒めるのに、触る必要ある?
ないよね?
というか、女子との距離近すぎ。
特に顔!
あ、別に嫉妬してる訳じゃないからね!
桃花「長瀬君!一緒に帰ろう?」
長瀬「うん。」
あ・・・やっぱり付き合ってたんだ。
美男美女でお似合いだなぁ。
・・・やっぱり、恋人がいるって羨ましい。
・・・。
じっと見てると、『あの頃』を思い出しちゃうから、やめとこう。
そう思い、私は二人から目を逸らした。
私は本当にバカだった。
この時の私は自分の事ばかりで、中川さんの目に隠れた、寂しそうな影を見つけてあげられなかったんだ・・・。
・・・翌日・・・
キーンコーンカーンコーン
男子A「昼だーーーーーー!!!!!」
女子A「男子うるさい。」
雛「長瀬くーん!お昼ご飯食べよ~!」
長瀬「うん。」
・・・え?
平井さんとご飯食べるの?
昨日は中川さんと食べてたのに?
皆(特に男子)の和気あいあいとした声に混じった平井さんの言葉に人知れず衝撃を受けた。
中川さんを振り返ると、寂しそうな顔で食堂に向かうところだった。
ちょっ・・・長瀬は何をしているのよ!
思わず席を立つと、隣で話していた女子達の不機嫌そうな声が聞こえてきた。
女子A「へー・・・。今度の彼女は雛ちゃんか。」
女子B「もう一回・・・っていうのは駄目かな?」
女子A「駄目でしょー。いけるんだったら私もやりたいし。」
彼女?
その言葉で自然と動きが止まる。
だって昨日は中川さんが彼女って・・・
どう考えてもおかしいのに、皆は普段通り。
・・・きっと、昨日は疲れてて、幻聴が聞こえてたんだ。
うん。きっとそうだ。
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