東京の協力者

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 やはり心霊現象は起きていたのだ。そういえば、こっちでも好美より先に僕が先に気付いたんだった。由香じゃなくて圭一くんに電話すれば良かった。それならもっと早く情報を共有できたかもしれないのに。失敗したなぁ。  圭一くんから話しを聞き出すと、由香が誰かからガラガラを貰ってきた日、部屋の中からとても小さかったけど赤ちゃんの声が聞こえてきたらしい。僕は声じゃなくて音だと思っていたから、圭一くんの耳の良さには感心する。  翌日、僕の家に送った後は聞かなくなったから、あのガラガラが原因なんじゃないかと考えたが、もう手元にはないし、僕達にそのことを話して変な人扱いされるのは困ると思ったから黙っていたらしい。気のせいの可能性も高かった。そして、いつの間にか忘れてしまった。 「そちらに送ってからすっかり忘れていましたが、昨日の夜に由香が修さんを迎えに行ってと言われて思い出したんです。まったく、前日まで来ることを教えないなんて……困ったものですよ」 「僕が来る理由を聞いてもしかして……って感じ?」 「ええそうです。何でフリーマーケット? と思ってすぐガラガラのことを思い出しました」 「なるほどね。僕がここに来たのはそれも理由なんだけど、もう一つあるんだ」  圭一くんにフリーマーケットへ行く理由と、設楽さんとの話を伝える。すると、彼は感心したように頷いた。 「未来の子供のための処理ですか……修さんのそういうとこ、本当に尊敬します。俺は怖くて無理です。心霊番組すら怖くてチラ見ですから」 「僕はそんなに立派な人じゃないよ。怖がっている妻すら抱きしめられなかったヘタレさ。正直に言うと、怖いから今すぐ逃げ出したい」  これまで何度逃げ出したいと思ったことか。今だってどこか遠くの地に行ってのんびり暮らしたいと思っている。  でも、そんなことは家のローンや仕事が許さない。世間だって許してくれないだろう。男のくせに無責任だなどと罵られるかもしれない。僕はそれらを跳ね除けられるほどのメンタルは持っていないから、世間の目を気しながら生きていくしかないのだ。時々、こんな自分が嫌になる。
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