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「ここが祠村・・・・・・」
十分に堪能した森を抜けると、ようやく目的地である祠村へと辿り着く。唯月はそう独り言を呟き、目と口を丸くすると、真顔の表情を浮かべる。だが、すぐに彼は孤独という不安から解放された事に相好を崩した。
村の出入り口には酷く錆びた門が聳え、外部の人間を歓迎するように開いている。その両端にも、さっきと同じような見るに堪えない祠が真ん中の道を挟むように並ぶ。
「・・・・・・ねえ、そこのあんた!」
「・・・・・・!」
門を潜るといきなり誰かの声が響く。無意識に振り返ると、村人らしき中年の女性の姿があった。掃除の最中だったらしく、隣にはかき集めたたくさんの落ち葉が、脚の高さまで盛り上がっている。彼女は箒を構え、身を守る姿勢を取りながら警戒している様子で
「その派手な格好、あんたこの村の人間じゃないね?どこから来たの?」
と率直な質問をされた。
「あ、えっと・・・・・・僕は東京から・・・・・・」
唯月は緊張のない返事を返し、女性は驚いた顔を近づけ
「と、東京・・・・・・!?あんな遠いとこから1人で!?あんた子供でしょ!?ここには何しに来たの!?」
さっきのバスの運転手とほぼ変わらない質問に、思わず苦笑してしまう。唯月は態度を改めると、先ほどと、ほぼ変わらない台詞で村を訪れた理由を述べる。
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