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――京都御所、紫宸殿南庭。
広場にもなっている広大な庭の中央には四方をしめ縄で囲った即席の舞台が作られ、その角には大きな台座に火が焚かれている。
舞台の中央では体に合わない大鬼神の面をつけ、紅白の衣装を着た巫女が黒い扇子を手に鮮やかに舞っていた。両側頭部には榊の枝を括り付けている。
紅はこれから流される血、白は潔白と陽、黒は罪と陰を表し、榊は神々に対する目印である。神楽ならば通常雅楽の演奏が付くものだが、この場に奏者はいない。まだ十代の巫女が唄う祝詞だけが微かに響いていた。
焚火が激しく燃えて、ゆらゆらと揺れる。四方からの光で巫女の足元には薄い四つの影があり、少女が動く度にそれが離れたり交差したりする。その中で舞い踊る姿はまるで夢か幻のようであった。
舞台の正面には緋毛氈の敷かれた高座が設けられていた。その中央には気品ある少年が緊張した面持ちで座り、すぐ傍に荒々しい気風の偉丈夫が控えている。
黒の狩衣に立烏帽子、闇のような瞳を持ったこの壮年の男こそ今世紀最高の大陰陽師【 土御門靖明 】である。舞台の周囲は面を付けた陰陽師や御所付きの神官達に囲まれ、周りにいくつも篝火が焚かれているというのにどこか暗く重々しい空気であった。
――事の発端は二月ほど前に遡る。
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