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靖明の全身から汗が吹き出していた。この地に複数の神を同時に降ろそうとしているのだ。それは如何に鬼才と言われる大陰陽師ですら容易なことではなく、強大な霊気の圧力に身が捩れそうであった。
気を抜けば全身がバラバラに弾け飛ぶほどの霊力を大地から吸収し、歯が割れそうになるほど噛み締めながら儀式を続けた。空には不吉な黒い雲がとぐろを巻き、雷鳴が轟き始める。
儀式では、各地に分散して奉納されていた三種の神器を取り寄せて行った。
神剣は靖明、勾玉は巫女、そして鏡は睦仁が抱いている。それらが煌々と輝き出し、空から四つの光の球が落ちて焚火に宿った。
――儀式が成功したのだ。
靖明が目で合図をすると、配下の陰陽師が花火を上げる。悍ましき儀式の締めくくりを伝える嚆矢である。
京都の四方で待機していた侍達は、真っ暗な空に紅い大輪の華が咲き、そして散っていく様を眺めた。辞世の句は既に提出してある。
美しく儚い花火を口火にして、男達は一斉にその腹を斬った。介錯は繊細な切れ味が求められるため、介錯人は投げるように刀を次々と取り替えていっては額に汗を滲ませ鈍色の刃を振るう。
そうして、全員の首を刎ね上げていった――。
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