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しかし、どうしたわけだろうか。しばらくそうしているうちに、洞穴の奥の方から淡い光が注ぎ始めた。懐中電灯や、スマートフォンのライトのような強い光ではない。今にも消えてしまいそうな、頼りなく薄い輝きだ。
いったいあの光は何なのだろう……少女は疑問に思った。人口の光ではない。この場所に長い間誰も入っていないことなど、一目見ればわかる。人が出入りしているのならば、ここまでの山道も整備されていた筈だし、洞穴の入り口が雑草で塞がれていることもない筈なのだ。少女は訝しく思いながらも、目を凝らして慎重に歩を進めていった。
そうして進んでいくうちに、徐々に穴が広くなり、やがては体を屈めるほどの窮屈さもなくなっていった。入り口の狭さからは考えられないほど、開けた空間が目の前に広がっている。とうとう洞穴の最深部に辿り着いたようだ。
一歩足を踏み入れようとした瞬間。突然、洞穴の中を柔い風が通り抜けていった。
素肌を撫でるような感覚に、少女は身を震わせた。寒気がする。何故か、周囲の温度が一気に低下したかのように感じられた。
やっぱりこんな罰当たりなことを考える女なんて、歓迎されないのかな――――と、自嘲しながら少女は思う。
「……これだ」
その空間に足を踏み入れると、奥には小さな木製の祠があった。
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