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いったい、どんな物が祀られている祠なのだろうか。辺りにそれが確かめられるものがないか探してみるが、蝋燭の明かりがあるとは言え、この暗がりでは何も見つけることができなかった。
「……ふぅ」
少女は深く息を吸い込んで、大きく深呼吸をする。
自分がこれからしようとしていることが、どれだけ罰当たりな事か理解しながらも、少女の覚悟は決まっていた。
――――これで、私の人生は変わるんだ。
物心がついた頃から今に至るまで、何から何まで親の言う通りに生きてきた。全部全部、彼らの意思にがんじがらめにされてきたのだ。自分が心からやりたいと思ってしてきたことなんて、一つだってありはしない。同年代の友人たちが集まって笑いあうことも、ただ一人横目で見てきただけだ。こんな生活にはもう耐えられない。
だから、そんな束縛だけの人生を変えてもらうのだ。
「そのためにここまで来たんだから――――」
そして意を決して、少女は祠の中を覗き込んだ。奥の方に何かがある。
中にあるものが何かははっきりわからないが、この祠に入るほどの物なのだから相当に小さい。目を凝らしてどうにか確かめようとするが、この暗さではどうすることもできなかった。
ならば仕方ない、取り出すしかないだろう。そう思って、少女は祠の中に手を伸ばした。
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