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その絵に描いたような不審者振りと、あまりにも唐突な邂逅に僕は思わず身構えた。この人はいったい何者だ?
麻里子さんのことを知っているような口ぶりだが――――もしもということもある。麻里子さんの負った怪我は僕より重いものだったのだ。いざとなれば僕が前に出るしかない。
「誰……ですか?」
麻里子さんを庇うように前に一歩踏み出すと、女性は大げさに笑い声を上げて見せた。
「おーおー格好いいねぇ、お兄さん? まだガキのくせに随分と男らしいじゃないの」
「ガキって……」
「まあそう怖い顔しなさんな。私は狐嶋にちょっとばかし話があってね。用が済んだらさっさと退散するから、そう邪険にすんなよ」
良いだろ、と言ってから女性は麻里子さんに向けて破顔した。
「健気で可愛い子じゃないの。今度貸してくれよ、なぁ」
「貸すか、馬鹿。それより……何の用なんだ、博士? こんなところまでわざわざ顔を出すほど、君もそう暇じゃないと思っていたが」
博士……というとまさか。
僕は驚いて麻里子さんに視線を移した。
「博士って……まさか」
「そのまさかだよ、優弥。こいつの名は瀬棚澄華という。例のB級オカルト雑誌、『怪報・嘘真』の編集者……といってもスタッフはこいつ含め三名だけだが。対して売れてもいない雑誌を執念で出し続ける変人だ」
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