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彼女の雑な紹介を、瀬棚さんは鼻で笑い飛ばした。
「お前にだけは言われたくねーよ、狐嶋。あるかどうかもわからんものを追いかけて、何年も人生無駄にしてるのはお前も同じだろうが」
「私は君のように道楽でやっているわけじゃない。真剣なんだ」
「私だって真剣さ。だから今回もうちの馬鹿どもをお前に協力させたし、私もこうしてわざわざ来てやったんだろうが」
二人の言葉の応酬に僕は半ば置いてけぼりを食らいながら、瀬棚さんがコートのポケットからボロボロの紙切れを取り出すのを黙って見つめていた。
あまり物持ちは良く無さそうな人だな……などとつまらないことを考えていると、先ほどまでへらへらとしていた瀬棚さんの表情が急に真剣なものに変わった。
「前にうちで取り上げた加藤朱美、今回殺されちまっただろう? お前の話を聞いた時は相当驚いたが……一度取材した相手が、今度は別の怪奇現象に巻き込まれて死亡なんてよ、さすがにきな臭いだろ。というわけで当時の資料をもう一度漁ってみたのよ。
あー、正直探すの面倒だったわ。……なんたってあの時彼女は錯乱状態みたいなもんだったからな、霊感のせいだか何だかわからんが、支離滅裂かつ意味不明な言動があまりにも多すぎて記事にした時にはばっさり切っちまった。だが……一つ、面白い話を見つけてな」
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