1-狐火

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2  慣れない早起きを強制させられて、早朝だというのにも関わらず既に体はふらふらだ。  慌ただしく最寄り駅に駆け込み、朝帰りの会社員や夜遊びに耽っていたと思われる若者たちに混じって切符を買う。今日が祝日だから、前日はお祭り騒ぎだったのだろうか。誰も彼もがふらついていて、中には駅のホームの中で大いびきをかいている者もいる。疲れ果てた様子の彼らを、僕は寝ぼけ眼でぼうっと眺めた。    始発の電車に乗り込んで揺られること、早三時間。電車に乗ってここまで遠出をしたのは始めてだ。窓の外にはこれまで見たこともない景色が広がっているのだが、意識が朦朧としていてそれほど新鮮には感じられなかった。  折角の連休初日だ。本当なら今頃も、学校に行かずとも良い幸せを甘受しながらベッドの中でまどろんでいた筈なのに。どうしてこんなことになってしまったのだろうか。 「――――ああ、今度の連休は空けておけよ」
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