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「春日!」
不意に名を呼ばれ、はっと顔を上げる。
「春日さん、無事ですね?」
振り向くと、鎮真と要が駆け寄って来ていた。
両手で鞄を持ち直し、微笑む。
「はい」
「今のは譲刃司だな。何かあったんじゃないのか」
「いえ。ただ譲刃さんが、今朝の事を謝りに来て下さっただけですから」
「謝りに?」
驚いたように聞き返した要に頷く。
「はい。ですからもう、狙われたりする事は無いと思います。心配して下さって有り難うございました」
鎮真はしばらく舞夜を見詰めた後で、軽く息を吐いて言った。
「……とにかく、春日が無事なら良い」
「君は意外と女性には優しいですよね」
「あ?何だよ。教師が生徒の心配したら悪いかよ」
「そして、照れるとガラがより悪くなると」
鎮真と要のやり取りを見ていた舞夜が、微笑んで口を開く。
「では私は、そろそろ帰りますね」
「一人で大丈夫か?」
「はい。それでは失礼します」
「気を付けて帰って下さいね」
頭を下げて立ち去る舞夜を見送りながら、鎮真が呟く。
「取り敢えずはこれで大丈夫だと良いけどな」
「しかし、譲刃司がわざわざ来るなんて異常じゃないですか」
「まあな」
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