崩れ出す砂の城

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ひたすら動いていた指が、ふと止まった。 文字が乱れる。 冷静に綴らなければならないのに、心が乱れる。 何故か、不意に泣きたくなった。 ペンを握る手で、自分に額を押さえる。 今になって、傷付く事が怖くなったのか。 もう戻る事なんて出来ないのに。 「分かっていた事じゃないですか……」 初めから、ずっと。 もうすぐ終わる。 終わってしまう時が来てしまう。 だからせめて、その前にもう一度だけ。 赤い跡が青に飲まれる夢から覚めても、もう一度。 まだ見ない夢の方まで、一人で走り続ける。 息をついて、ペンを持ち直す。 今はただ、書くだけだ。 いつも求め続けた、その想いが力となっていつか届くように。 遠回りでも、同じ場所を巡り続けているだけでも。 いつかはこの場所を飛び出して、外へ。 自分の芯にあるものを信じて。 遠い場所へ。 もう少しだと思うから。 もう少しで、この夢は終わる。 だからいつか、その時が来ても悔やむ事の無いように。 自分が選んだ道から生まれる代償も、全てを受け止めて。 微笑みを願うから、いつもただ。 今は遠くても、いつかはこの想いが。 本当の想いが。 届いてほしい。 いつか貴方へ。 本当の貴方へ。
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