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結局、駅に着くまで二人は無言のままだった。
「じゃあ、また学院でな」
「はい。本当に有り難うございました」
挨拶を交わし、笑顔で別れる。
雑踏の中をしばらく歩いたところで、鎮真は立ち止まった。
振り向いた先に、もう彼女の姿は無い。
息を吐き出し、携帯電話を取り出す。
今はまだ、何の連絡も来ていない。
だが、いずれは必ず結果が出るだろう。
けれど、もしも願いが叶うのなら。
このまま、自分の勘違いで終わってほしい。
そう思ってから、自嘲の笑みを浮かべる。
叶わないお願いだ。
分かっているのに願わずにいられない程。
今日が、これまでが、きっと楽しかったのだろう。
そして、夕焼けは燃える。
想いを全て焼き尽くすかのように、赤く美しく。
この光を、あと何度見る事が出来るだろうか。
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