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発表会を翌日に迎えた日の放課後、舞夜は鎮真の研究室のドアをノックした。
返事があってドアを開けると、部屋の中にはコーヒーの香りが広がっていた。
「ああ、春日か。いいところに来たな。今ちょうど、コーヒーを淹れたんだ」
そう言いながらカップを二つ並べて、コーヒーを注ぐ。
「まあ座れ」
「有り難うございます」
鎮真はソファに座った舞夜の前にコーヒーで満たしたカップを置いた。
「いよいよ明日だな、発表会。準備の方はどうだ」
「はい、全て済んでいます」
「そうか。さすが春日だな」
鎮真は立ったまま、壁にもたれてカップに口を付けた。
「あの、先生。聞きに来て下さいますよね?」
「当然だろ。これでも一応教師だしな。生徒の頑張りは見届けないとな」
すると舞夜は、ほっとしたように息をつく。
「有り難うございます。良かった。きっと私、誰より先生に聞いてほしいと思うんです」
「どうしてだ?」
「……どうしてでしょうね」
返って来たのは静かで落ち着いた、そして何処か寂しげな声だった。
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