一章 帰還

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  「何かあったの?」  後ろに立っていたクレーネーに訊ねられて、苦笑する。 「どなたかが僕に伝言を残していたようです」 「へー、誰だろうね」 「……どなたでしょうね」  心当たりの人物は複数だ。誰からの伝言であっても、少々厄介だ。受付嬢は小さな封筒を手に戻ってきた。 「お待たせいたしました。では、アクスレイド公爵家の姫君、ユリアス様からご伝言です。到着次第、連絡を、とのことです。迎えを用意しているとおっしゃっておりました。こちらをお渡しするようにと、招待状をお預かりしております」  リューティスは硬直した。時間が遅いこともあり、会うのは明日以降であると思っていたのだが、彼女の方からギルドづてに連絡が来るとは思ってもみなかった。  念話ではなく、わざわざギルドに伝言を残して招待状を用意していたのは、リューティスを正式に屋敷に招待するためであろう。貴族というのは面倒なしきたりに縛られている生き物なのだ。  受付嬢からぎこちなく招待状を受け取る。 「アクスレイド公爵家の御屋敷にご連絡を入れてもよろしいでしょうか」 「…………お願いいたします」  彼女に会えるのは嬉しい。しかし、せねばならないことが頭の中を駆け巡り、鼓動が跳ね上がるのを感じた。 「かしこまりました」  受付嬢は一礼をすると奥の部屋へと姿を消した。その後ろ姿を見送りつつ、速まる鼓動をどうにか押さえつけようとしたが、どうにもおさまる気配はない。 「誰?」  首を傾げるクレーネーから視線をそらし、呟くように答えた。 「僕の……、その、恋人です」 「あ、そっか」  クレーネーは納得した様子でうなずいた。クレーネーはリューティスの恋人の存在は知っているが、詳しいことはあまり話した記憶がない。 .
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