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「っはい!」
ユリアスはぱっと笑みを浮かべた。
「すぐに馬を用意しますね」
立ち上がろうとした彼女をとめる。
「いえ、馬ではなく……、僕の騎竜に乗りませんか」
馬では行ける範囲が限られてくる。しかし、彼方の足ならば、遠出をしても日暮れまでに帰ってこられる。
「騎竜、ですか?」
「……走竜を購入したのです」
「走竜! 一度、乗ってみたかったんです」
笑みを深めた彼女に、リューティスは密やかに安堵の息を吐きだした。ニアン学園に通い、魔物と対峙する機会も多い彼女ならば問題ないと思っていたが、貴族の令嬢の中には竜を怖がる者も多いと聞いていたのだ。
「すぐに動きやすい格好に着替えてきますね」
ユリアスは長いドレスの裾を翻し、部屋から出て行った。リューティスは大きく息を吐きだす。『あれ』を渡すまで己の心臓が持つかどうかリューティスには自信がなかった。
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