#2 緋色と緑と青色と。

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#2 緋色と緑と青色と。

 次の日。とにかく、周りの視線が痛かった。嘲笑っているような、居心地の悪い視線だった。今日はイタチ君と色々話して終わった。  その次の日。イタチ君に勧められた、自然系の魔法を実行してみたところ、見事成功した。これで相手の動きを止める手段ができた。  相も変わらず、周りの視線は居心地が悪くなる最悪のものだった。明日は戦場。緊張はしていたが、なぜだか怖いとは思わなかった。むしろ、楽しみなくらいだった。遂に頭がおかしくなってしまったのかもしれない。  でも、その方がいいのかもしれない、なんて思ってしまう自分がいる時点で、ダメな気がする。  でも、明日は彼を、隣で静かに眠っている彼を、守りたい。これだけは叶える。いや、実行する。 -------------  当日の朝は、想像以上に早かった。普段着で行くのかと思ったら、緑の迷彩柄の、子供用の軍服を渡された。他国は色が違うらしい。  髪型は、いつも通りに後ろで結ぶことにした。イタチ君から貰ったこの髪ゴムを使うことが今日で最後かもだなんて、思いたくもない。  軽く動いてみると、軍服は結構動きやすかった。あとは、おかしなミスをしないことを案じるのみ。扱う武器を聞かれたから、 「短刀とスコープ付きの狙撃銃」 と答えたら、大声で笑い飛ばされた。先に土に返してやろうかと思った。彼は、なぜか笑われることはなかった。僕はその差に苛立ちもしなかったが、彼は複雑な顔をしていた。  軍の車に乗って、見慣れた校舎に別れを告げた。隣に座る彼は、壁に背を預けて眠っていた。お気楽。お調子者。それこそ、彼らしさ。  しばらくガタガタと、腰の痛くなる道を抜けると、停車した。一つしか無い扉が開き、無理矢理連れ出される。嫌な、思い出したくもないあの日を思い出して、思考が停止しそうに、倒れそうになるのを堪える。 「おら、受け取れや。お前らが希望した武器、用意したぜ」 ガタイの良い二人の軍人から、僕らは武器を渡された。二人で目を合わせ、同時に細める。何が楽しいわけでもない。ただ、嬉しいだけ。やっと二人きりになれた。 「……この森の中に、敵がいるはずだ。罠もあるかも知れん。注意して進み、敵を排除しろ」
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