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#1 決められていた結果
小枝に居座り続ける小鳥のさえずりで、目が覚めた。楽しい夢を見ていたのか、悲しい夢を見ていたのか、記憶にない。壁に掛けられた青縁の時計は、午前六時になろうとしていた。音を立てない秒針は、静かに、でも確実に、時間が進んでいることを表している。
となりのベッドには、身分こそ違うが、最高の親友とも言うべき少年が静かに寝息を立てて寝ていた。後ろ姿しか見えないが、きっと良い夢を見ているのだろう。証拠に、時々小さな笑い声が漏れている。
今日は五月の初めの火曜日。今は戦争中。戦争といっても、この大陸の端あたりにある森林内で行われているから、この学園寮に影響は無い。が、ここは翠ノ国。戦力が全てで、そこに年齢の壁は存在しない。
数ヶ月前、小等部から高等部の生徒が集まる全校朝会にて、
「毎月の初めの火曜、この学園からも、年齢問わず、戦士を二人ずつ戦場へ送り出すことが決まった」
との報告が、凹凸の無い、丸い頭で日光を反射する教頭から話された。勿論、すぐさま生徒は怒り狂った。なんせ、相手は確実に大人。いくらこの学園が国内最高峰の魔法使い育成学園だからと言って、子供が大人に勝てる確率など、無いに等しい。確かに、学園内でも大人に負けず劣らずの魔法を扱える生徒は存在する。が、それも数えられるほどだし、実戦経験が無いのだから、勝てるはずもない。
そんな子供でも分かっているようなこと、大人が分かっていないはずがないのに。それでも彼ら大人は、実行すると言って、辞めようとはしなかった。
天気に恵まれた広い校庭に、大人に対する罵詈雑言が飛び交う中、それを全て静止し、彼らは無理矢理、幕を閉じた。当事者たちの、無理矢理巻き込まれる側の意見など、全く聞かずに。
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