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よって、今日の朝会で、死場に放り込まれる二人の子供が、発表されるということになる。
あの唐突な報告の日以降、授業内容も、生活の仕方も、全てが一変した。授業は体育という名目で行われる、実践に近い形の生徒同士の肉弾戦の授業が増え、いつも静かなはずだった医務室は、常に授業による負傷者で溢れる事となった。
今のところ、戦場へ行って帰ってきた者は一人もいない。全員、無駄死にした。教員は、その話題を生徒から振られた時、バツが悪そうに目を背けるか、如何にもご尤もな台詞を吐いて急ぎ足で逃げ去ってしまう。要は、「生徒は誰一人勝てない」と、わかっているということなのだろう。問い詰めれば、彼らはきっと政府の命令だとか言って逃げ道を作ってしまうのだろうから、無駄に問い詰めたりはしていない。
今日呼ばれるのが僕だったとしても構わない。どうせ、今も昔もこれからも、嫌われ疎まれる運命なのだろうから。せめて、となりで寝ている彼さえ無事でいてくれるのなら、親も教師も他の生徒も、どうだっていい。
こんな、女みたいな容姿じゃなかったのなら。
あんな、異常に女の子供を欲しがって、僕を女として育てる異常な女性が赤の他人だったのなら。
生前はとても優しく、皆から評判だったと言われている父が、まだ生きていたのなら。
僕が、異常に得意魔法である自然系の魔法の扱いが、下手だったのなら。
僕が、周りよりも理解が遅く、出来が悪く、運動も勉強も出来なくて、周りよりも全ての性能が、技術が、容量が下だったのなら。
少しは、こんな最低最悪の人生も、何か変わってくれるのだろうか。少しくらい、今より幸せになれたのだろうか。
彼以外に、友達はできたのだろうか。少しは、こうなる前の学校生活も、保育園の生活も、楽しくなったのだろうか。
本当、何やってるんだろう。考えても、思考を逸らしても、現状は変わらないというのに。
そんなどうしようも無い苦悩に、いい加減頭が痛くなってしまいそうだ。ベッドから足だけを下ろし、何気なく天井に顔を向ける。LEDの少し大きめのライトだけが設置されている、なんの楽しみも無い、木材の天井。
きっと、今日も教師や臨時で来ている軍人に馬鹿にされ、罵られ、理不尽な叱責を受ける羽目になるのだろう。もうウンザリだ。いっその事、この手で、この首を――
「なんだ、もう起きてたのかよ……」
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