1人が本棚に入れています
本棚に追加
不意に背後から響いた聞きなれた声に肩を少し震わせ、振り返る。相変わらずのひどい寝癖で乱れた、本来は美しいはずの金髪をかきあげ、眠たそうに欠伸をする少年。
「先に起きてたなら、起こしてくれりゃ良かったのに……」
背中を起こして睨み付ける様と口調は、面白いほどに不釣り合いだ。金髪と碧い双眸なんて、美男美女の鉄板だろうに。
「ごめんねイタチ君、ちょっと考え事してて……」
軽く誤魔化し、息をつく。再度天井を見つめ、思考を巡らせる。今月の宣告を受けるのは、一体誰なのか。強がりなあの少女か、それとも、いつも僕をおちょくってくる少年か、それとも、他でもないこの僕か。
まあ、仲がいいのはイタチ君くらいだし、他の誰が死んでも構わないというのが本音ではないといえば、半分嘘になるが。
「……そっか、今日って火曜日か。嫌な日だよな。それに、今日ってアイルの誕生日だもんな。そりゃ複雑な気持ちにもなるか」
申し訳なさそうに、トーンを落とした、彼の返答。少し考え、思い出した。
「あ、そっか。今日って僕の誕生日だったね、そういえば」
「……へ?」
拍子抜けしたような情けない声を鼻で笑うと、今度は怒り出した。「い、いくらなんでも笑わなくったっていいじゃんかよ!」
振り返ると、恥ずかしさか怒りなのか、顔を真っ赤にしてこちらを涙目で睨む、幼さを残した少年がいた。怒りのやり場がないのか、真っ白なシーツを小さな音が鳴るほど握りしめて。面白いから、もう少しいじってやろうか。いや、可哀想だし……。一応、心配してくれたわけだし……?
「ごめんごめん。ほんとに忘れてたんだよ? こんな状況だし、そんなに驚かなくたっていいじゃない?」
からかい混じりに言葉を探す。彼はどうやら理解してくれたようで。なによりだ。
「あんまり思い詰めるなよな、ほんと。……ま、取り敢えずってことで」
そこで言葉を区切ると、彼は僕の目に勢いよく手を当てた。乾いた音が部屋に響く。
「いッ!? ち、力入れすぎだよ、イタチ君……」
「ハハッ、悪かったって」
絶対分かってないだろ、とでも言いたくなるような、誠意を微塵も感じさせない声。シーツの中をまさぐるような音しか聞こえないが、一体何をする気なのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!