第一章「冷凍食品の気持ち」

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 「まあ私から言えることとしては、貴方も藍子ちゃんも無茶をするタイプなんだから好んで関わろうとしないことね。あの時みたいに、誰かがまた助けてくれるなんて楽観的なことを考えてたらほんとに死んじゃうわよ」  「……ご忠告痛み入ります」  「私も、右腕候補が死んじゃったら――悲しいもの」  フッと、日端教授の顔が翳る。僕は慌ててそんなつもりはないと、必死に言い訳しておいた。日端教授は納得してくれたのかどうかわからないが、またいつもの笑顔に戻る。  結局書類整理もそこそこに、日端教授に研究室を追い出されてしまった。本音を話さなかったとはいえ、日端教授とは知らない仲でもない。彼女も十和が事件に関わり始めたことを察して、なんとか僕に止めて欲しいと思って追い出したのだろう。「早く止めなさい」と、暗にそう言われている気がした。日端教授はアグレッシブで、性格的には十和に似ているが大人としての経験もあり攻めるべきところでは攻め、引くべきところでは一線を引く判断ができる。そのあたりが十和と日端教授の違いというべきか。  しかし僕も、十和の気持ちが分からないわけでもない。正義感が強く、人当たりもいい彼女が友人のために命を張ろうとするのも無理からぬことだろう。人の行動は、性格が反映される。もっと言えば、そういう性格であるが故に無意識そういう行動を取らざるを得なくなることだろう。     
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