第一章「冷凍食品の気持ち」

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 ……おや?  全然暇そうには見えなかった。なんだよこれ、暇人なのは僕だけなのか?  浦江大学二回生の僕、西尾光矢は一人学生食堂で日替わりのA定食をバランスよくつつきながら真顔になっていた。  夏季休暇目前になり、テスト期間をぼちぼち終えた学生たちの姿で食堂はそれなりに賑わっていた。工学部と農学部寄りにある学食の分店は規模は本食堂の規模に比べるとそこまで大きくはないが、学生のひしめき具合で言えばどっこいどっこいだ。なまじ男子学生の多い学部側なだけあった本食堂よりも狭苦しくさえ感じる。  というのも、僕は法文学部の人間なため基本的に使うのは本食堂だ。  こうして分店で飯を食うのも珍しい。日端朱未教授の小間使いで工学部の教授のもとに足を運んだ帰り、ちょうど昼時だったこともあり学食に足を運んだのだが見事に裏目に出てしまった。  長期休暇前で人が少ないだろうと踏んだのだが、僕が思っている以上に理系の学生というのは忙しい人々らしい。  なんて、暇人の僕が言っても皮肉にも聞こえないか。  理系の学生の群れの中、細々と老人のように食事をしていると前の席にダン!と効果音のオノマトペが見えそうな勢いでトレーが置かれた。     
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