第一章「冷凍食品の気持ち」

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 「おっす、久しぶりだね西尾くん!」  「なんだ、十和さんか。そんな勢いつけてトレーを置くこともないだろ。海賊漫画じゃあるまいし」  「相変わらず何言ってるか分からない人だね西尾くん……」  「お、もしかして僕褒められてる? まあ僕ほど気さくでフレンドリーな人間ともなると、やっかみが多くて困っちゃうなぁ」  十和藍子は、同じくA定食のようだった。メインのとんかつを突きながらやれやれと言った顔で食事を始める。  「奇策な人?」  「そこまで変人じゃないぞ!」  「なんで分かるのよ!?」  なかなか高度なやり取りだったが、流石は十和藍子である。彼女とは大学入学直後にあったちょっとした事件で親交を深めることとなった間柄だ。まあそれを差し引いても、機転が利き愛嬌もある彼女が控め地味メンである僕と親しくしている光景は周囲から見てもなかなか異様に見えるようで若干ざわついていた。しかし数分もすると視線もなくなり、期末考査の答え合わせや、単位のために教授に土下座しにいくかなんて会話にまた戻っていった。  軽いジャブも終わったところで、僕も再び食事を突き始める。十和はいつの間にか平らげていた…はやっ!?     
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