第一章「冷凍食品の気持ち」

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 と、十和に失望されるのを覚悟で言葉を紡ぐ。  大丈夫、痛みには慣れているから――平気だ。  しかし、十和は答えが分かっていたかのように少しはにかんでみせると、トレーを抱え立ち上がった。  「ダメ元だったから別に気にしてないよ。貴方が悪目立ちしたくないのは、あの時ずっとそばにいた私には分かってる。だから気にしなくていいのよ、本当」  それだけ言い残すと十和はスタスタと歩き去っていった。  本当に、彼女には敵わない。僕には、自分を投げうって守るだけのものが、果たしてあるのだろうか……。       ◆  その日の午後、僕は日端教授に呼び出されていた。暇人だと自嘲した手前、呼び出されて「忙しいんでまた別の機会に」とはいかなかった。もとよりこの人に、その手の言い訳が通じる由もないが。  厳密にはこの彼女、日端朱未のゼミ生ではない僕だが、どうにも彼女は僕のことを気に入っているようで、ことあるごとに呼び出してはしょうもない話しに突き合わせ、ある時は本気で彼女のフィールドワークにも付き合わされることもしばしばだ。  今日もわざわざ理系の縄張りに赴いたのも、彼女からの使い走りがことの発端である。     
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