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彼は、ゲランの街を散策していた。いや、捜索と言ったほうがよいのだろうか。
長身で金髪のその青年は、ひとを探していた。
―もうすぐ、巡り会える。
左耳のリングのピアスには異国風の唐草模様が施され、どことなく高貴な雰囲気を醸し出すその青年は、背にはソードと細剣(レイピア)が携えられ、無造作に結ばれているブロンドの髪は、風が吹くとキラキラと金糸のように煌めいた。碧い切れ長の瞳、鼻筋の通った整った顔は角度によってはまるで気丈な美少女のようでもあった。なぜ角度によってと言うならば、右頬に十字の向疵(むこうきず)があるからである。
―北の大陸に渡り約三年。色々街を尋ねまわり情報を集めがてら探していた、定めの者達を…。
ゲランの街はたくさんの人々が交易に赴いていたが、その中から彼は見つけ出す自信はあった。
「絶対に、見つけ出す…!」
青年は碧い瞳で空を見上げて、そう呟いた…。
キャロルと旅に出て数日。
私は今まであったことをポツリポツリと話した。
・・・母さんが亡くなったことも。
魔性に殺されたってまだ言い切れる自信がなかった。私のあれからの記憶が全くなかったからだ。
もしかして…ううん、そうであってほしくない…。
キャロルに話しながら私は首を振って口を噤んだ。
そのせいか母が亡くなった時のことを彼女は、追求することはもちろんしなかったし、項垂れていた私をそっと抱きしめて、「辛かったのね…」と
一言言っただけだった。
私が生まれた時にキャロルが丁度4つだったらしいから、キャロルは21歳だ。
一人っ子の私としてはなんだか優しいお姉さんができたみたいだった。
私が戦いで派手に怪我をすると、すぐに手当てをしてくれて、野宿の時は美味しいスープを作ってくれる。
毎朝毎晩神に祈りを捧げ、無事に過ごせたことに感謝をして暮らしている彼女と一緒いると、
私も心が穏やかになってゆく感じがした。そういえば一人旅ではなくなってから、怖い夢もめっぽう見なくなった。仲間ができて安心したのだと思う。
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