第2章 ラント

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…そして慣れない砂漠地帯では戦えず、捕らえられ、手は拘束され、今に至る。 「あの女、割といい女だった」 「………イーリス、やっぱりこいつ置いてこう。お前の教育に悪い」 「え?」 「パパ厳しいかよ」 「パパって言うなぶん殴る」 しかし3人の冷静さは掛けていなかった。…冷静と言うよりも通常運転の方が正しい。 流石に見張りもイラついてきた。 「おいさっきからうるせぇぞ!!」 「てめぇの方がうるせぇだろうが!黙ってろ!こっちは大事な話してんだ!」 見張りの怒鳴り声に反射的にキレるクルト。 パパは娘の教育方針に燃えている。ロルフという男が害悪であると感じるのは仕方ない。 「捕まってるくせによく元気でいられるわね、お馬鹿御一行様」 扉のない入口から、頭領と思われるさっきの女性が入ってきた。 「あっ、可愛っぐわぁっ?!」 「クルト?!」 全て発言する前に、クルトは害悪ロルフを踏んだ。 「……俺らは金目のものは持ってない。なのに、捕まえた理由はなんだ。」 「確かにね、捕まえて損した感じはあったわ。貴方達の持ち物、どれも高く売れるものじゃないもの。」 「じゃあもう用は済んだだろ。出せ。」 「だめよ、だって私達盗賊だもの。」 イーリスの耳がピクッと反応する。 「とうぞくって何?」 初めて聞く言葉、人だ。会ったこともないし、クルトからも聞いたことない。 「……お前、こんな所にこんな小さい子連れて正気?」 女性は捕らえた時を見ていなかったのでイーリスが9歳程の小さな女の子であることに今気付いた。 「………」 正気か、と言われてクルトはなんとも言えなかった。 自分が人とは外れていることを知っている。それが彼にとっていい事であっても、悪いことであっても。 そしてそれを否定することが出来ないことも。 「クルト?」 「…いいか、盗賊ってのは人のものを盗む奴等だ。つまり悪い奴等だ。」 「悪い人達…じゃあ倒さないとだね!」 クルトは分かりやすくイーリスに盗賊というモノについて教えた。それを聞いたイーリスはやる気満々に言った。 「は?」 クルトは呆れた。 「え?」 イーリスは不思議がった。 「…お嬢さん、今お前は捕まってるの。それに、お嬢さんみたいな小さい子供じゃ無理よ。」 「え、う、うーーん……クルトー…」 「ダメだ。お前この前使ったばっかだろ。許さない。」 「ええぇ…でもこのままじゃクルト死んじゃうよー。あとロル」 「お前の中の俺がいかにひ弱なのかがわかった。…まぁ安心しろ。俺がなんとかする」 「…わかった!クルトがそう言うなら大丈夫だね!」 「当たり前だ」 クルトはイーリスが頼ってくれることに嬉しさを感じ、表情が若干だが優しくなった。 彼がイーリスに対してのみ見せる、表情だった。 「……パ痛い痛い痛い」 ちなみにロルフはここまでずっと踏まれ続けていた。
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