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…そして慣れない砂漠地帯では戦えず、捕らえられ、手は拘束され、今に至る。
「あの女、割といい女だった」
「………イーリス、やっぱりこいつ置いてこう。お前の教育に悪い」
「え?」
「パパ厳しいかよ」
「パパって言うなぶん殴る」
しかし3人の冷静さは掛けていなかった。…冷静と言うよりも通常運転の方が正しい。
流石に見張りもイラついてきた。
「おいさっきからうるせぇぞ!!」
「てめぇの方がうるせぇだろうが!黙ってろ!こっちは大事な話してんだ!」
見張りの怒鳴り声に反射的にキレるクルト。
パパは娘の教育方針に燃えている。ロルフという男が害悪であると感じるのは仕方ない。
「捕まってるくせによく元気でいられるわね、お馬鹿御一行様」
扉のない入口から、頭領と思われるさっきの女性が入ってきた。
「あっ、可愛っぐわぁっ?!」
「クルト?!」
全て発言する前に、クルトは害悪ロルフを踏んだ。
「……俺らは金目のものは持ってない。なのに、捕まえた理由はなんだ。」
「確かにね、捕まえて損した感じはあったわ。貴方達の持ち物、どれも高く売れるものじゃないもの。」
「じゃあもう用は済んだだろ。出せ。」
「だめよ、だって私達盗賊だもの。」
イーリスの耳がピクッと反応する。
「とうぞくって何?」
初めて聞く言葉、人だ。会ったこともないし、クルトからも聞いたことない。
「……お前、こんな所にこんな小さい子連れて正気?」
女性は捕らえた時を見ていなかったのでイーリスが9歳程の小さな女の子であることに今気付いた。
「………」
正気か、と言われてクルトはなんとも言えなかった。
自分が人とは外れていることを知っている。それが彼にとっていい事であっても、悪いことであっても。
そしてそれを否定することが出来ないことも。
「クルト?」
「…いいか、盗賊ってのは人のものを盗む奴等だ。つまり悪い奴等だ。」
「悪い人達…じゃあ倒さないとだね!」
クルトは分かりやすくイーリスに盗賊というモノについて教えた。それを聞いたイーリスはやる気満々に言った。
「は?」
クルトは呆れた。
「え?」
イーリスは不思議がった。
「…お嬢さん、今お前は捕まってるの。それに、お嬢さんみたいな小さい子供じゃ無理よ。」
「え、う、うーーん……クルトー…」
「ダメだ。お前この前使ったばっかだろ。許さない。」
「ええぇ…でもこのままじゃクルト死んじゃうよー。あとロル」
「お前の中の俺がいかにひ弱なのかがわかった。…まぁ安心しろ。俺がなんとかする」
「…わかった!クルトがそう言うなら大丈夫だね!」
「当たり前だ」
クルトはイーリスが頼ってくれることに嬉しさを感じ、表情が若干だが優しくなった。
彼がイーリスに対してのみ見せる、表情だった。
「……パ痛い痛い痛い」
ちなみにロルフはここまでずっと踏まれ続けていた。
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