逃亡の苦悩

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俺は何をやっても長続きせん、ダメ男。 大学中退し、職も転々とした。 そんな中、恵子のお腹にガキができた。 ガキの俺にガキができて、金もねーし、仕事もねー。 今後何をどうすればいいのかもわからん。 そんな苦悩の中、飲み屋で知り合った村瀬という男にひょんな事から、仕事を紹介してもらう事になった。 最初は車洗いのバイトで日当5000円ほど。 その後単発で、雀荘の手伝いや運転手など数回行ったころ、村瀬から始めて事務所に顔を出せと言われたのだった。 「おぅ!アキラよーきたな!」 「どうも。」 「お前、ガキが出来て親父になるんやろ?金がいるやろうが!割のよか仕事バンバン回しちゃるけん!」 村瀬はそう言うと俺の背中をバシバシと叩いた。 明らかに、この事務所具合からしてまともな仕事じゃないとはわかっていたが、それもこれも恵子と生まれてくる子供の為。まだ男か女かもわからないが、ちゃんとしてあげたい。 「向こうの親御さんには挨拶行ったとや?」 「いや。まだです。というか、まだ妊娠した事も報告してないんです。俺が定職にもつかんとフラフラしとるから」 そう言うと村瀬はどこかへ電話をかけ始めた。 「おー。そうたい、そうたいあの駅前のところの、おー、2週間でなんとかならんや?あ?よっしゃ、頼むぞ!」 そう言うと満面の笑みで電話を切った村瀬。 そして、俺にオッケーサインを出し、ニカっと笑ったが、俺には何の事かサッパリだった。 その後、村瀬は用事が出来たと言う事で、また2週間後にスーツを着てくるように言い残し、その場を去ったのだった。
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