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僕はそれを聞いて、若干だが安心したのを覚えている。
「それがいい、なにしろここはあまりにも融通が利かないし、君も隠居するには若すぎる」
「兎に角、君は久々のお客だから…いや、寧ろ家族も同然だからね。そんな訳だから遠慮は要らない、僕はもてなしは出来ないけれど、好きなだけ居てくれるといい。なんでも好きに使ってくれたまえ」
「どうかお構いなく。おおいに勝手にやらせてもらうよ」
僕は着いたその日の内に、何日かをこの家で過ごすつもりを決めていた。
一つには単にこの後の予定がなく、夏休みがまだ充分にあったため、もう一つには、やはり鳴人を独りにすることに、若干ではあるが気が咎めたためだった。
その日は、夕刻になると、村の女性が一人やってきて、夕餉の世話を焼いてくれた。
「朝の内に里のご新造さんに頼んでおいたんだよ」
「それはまた、随分と手回しがいいぢゃあないか」
「今日だけのことさ、明日からは君の好きにしてもらうよ」
僕達は久々に夕食を共にし、鳴人は離れへ、僕は母屋の納戸に一番近い部屋に床を敷いて休むことにした。
その夜のことだった。
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