小さ神

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 「唯、ここはキリストの国だった。  神を愛した者の死が、奇跡に満ちていても少しもおかしくないと思う。  だが、あの子の場合は…」  そこまで言うと、彼は戸惑うように目を伏せ、また注意深く僕を見た。 彼の心が揺れているのが見えた。  彼は迷っているのだ。 それが正常な検証の下での言動なのか、狂人の戯言なのか、彼自身判別がつかなくなっている。 それを言ったが最後、自分が二度と戻れぬ狂人の世界へと振り切れてしまうのを恐れているとでもいうようだった。  『飛躍的だとは思うけれど』と申し訳程度に前置きしてから、遠慮がちに続けた。  「僕はあの子の例を、この少女と照らし合わせて、些かの遜色もないものだと思う。これを事実かどうかを問うことは、最早あの子の例をおいて疑う余地はない。僕はここに記された少女とあの子が、宗教とは全く関係のない所で繋がっているのだと思う」 「これは近親者の思い入れが多分に含まれているのだけれど、  僕は彼等の間にあるある種の雰囲気を嗅ぎ取っている」 「それが君の言う『小さ神』だというのかい、民間信仰か何かなのか」
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