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アリアドネはいつものように教室で本を読んでいた。ここは王立学園…。貴族の子息子女が通う由緒正しい学園だった。貴族にはそれぞれの階級があるが学園にいる間は身分問わず平等に接するをモットーにしている。学園には高位貴族の令嬢令息ばかりでなく、王族に連なる人間も在学していた。アリアドネも貴族令嬢であるのでこの学園に通っている生徒の一人だった。
「ほら、ご覧になって。」
「また、シンシア嬢が…、」
周りの令嬢が中庭の光景に眉を顰める。そこには最近学園内で噂されている令嬢の姿があった。教室の窓から中庭に目をやると、一人の令嬢を複数の子息達が取り囲んでいた。令嬢を取り囲んでいる彼らは高位貴族の子息達ばかりで容姿端麗、能力も秀でていて将来を期待されている有望な人材ばかりだ。が、最近ではその期待も彼らの行動によって失望されつつあるが。それというのも、子息達はある一人の令嬢に対して、まるで競い合うように取り合い、お互いを牽制し、愛を囁いているのだ。その令嬢というのが今目の前にいるシンシア嬢だった。彼女は男爵令嬢でありながら高位貴族の子息ばかりか王太子までも魅了し、取り巻きにしているのだ。学園では令嬢としてははしたない行動をすることで有名だった。つまりは男好きで尻軽、同性からは悪い噂しかなかった。が、そんな噂も気にもしないのか有力貴族の子息達はシンシア嬢を取り囲んでちやほやと持て囃していた。まるで花の蜜に群がる蜂の様だとアリアドネは思った。
「殿下達も何故、あんな女を寵愛するのか…、身分も容姿も能力も遥かに私達と劣るのに。」
「これがアリアドネ様だったら納得しますのに。」
アリアドネはぴくり、と本を持つ手を震わせた。口元が引き攣りそうになるのを何とか堪える。
「私など、分相応ですわ。」
「まあ。何を仰いますか。アリアドネ様は公爵家の出身…。しかも、ただの公爵令嬢ではなく、あのアルセーヌブルク家のご令嬢ではありませんか!アリアドネ様ならば王家にも嫁げる身分ですわ。」
「社交界でもアリアドネ様は『白薔薇の妖精姫』と噂される程の美貌を誇ると有名ですし。」
「貴族の令嬢ではアリアドネ様に憧れない令嬢はおりませんわ。」
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