お返し

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お返し

ーピンポンー  玄関のチャイムが鳴った。  一体誰がこんな時間にと不思議に思った。  時刻は午前2時。  誰がこんな深夜に人の家を訪ねてくるというのだろうか。  テレビもラジオもつけていないし、ずっとベッドの上に転がってスマートフォン片手にネットサーフィンして、動画だって観ていないから生活音がとか、音量がうるさいとかの苦情でもないだろう。 ーピンポンー  再度チャイムが鳴らされた。  まだ何者かが玄関の前にたっている。  スマートフォンの時計をあらためて確認したが、やはり時刻は午前2時で、こんな時間に訪ねてくる知り合いなど全くもって心当たりはなかった。  大学進学に伴い一人暮らしが始まって、特にサークルに入るでもなく、なんとなくバイトをして、家と大学生とバイト先とをぐるぐるとしている。  こんな生活の中で、正直昼間でもこの家を訪れるものは居ない。  本当にいたずらにしても質が悪い。  気味が悪くなって、布団を頭からしっかりと被ってみた。  こんな時間だし、たとえ本当に知り合いが訪ねてきたのだとしても、寝ていて気づかなかったと言い訳してもなんらおかしくなことはないはずだ。  目を閉じる。  電気は最初から点いていない。  暗がりの中で、スマートフォンの画面だけは煌々としていたが、遮光カーテンがしっかりと閉められているのに、この細やかな光はそんなに簡単に分かるものなのだろうか。  布団の中でじっと目を瞑る。  きっとその内なんてことのない夢を見て、太陽が昇って、スマートフォンのアラームが鳴って、朝がきたと思うのだ。  そう、自分に言い聞かせた。 ーピンポンピンポンー ーピンポンピンポンピンポンー  玄関のチャイムは、そんな俺の心を見透かしたかのように繰り返された。
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