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私は呆気に取られて、その男の人を見る。
「え?おじさん?」
するとその男は怒る。
「泣き止めと言っているのだ。あと、私にはカール=ハイネンという名がある。その名で呼べ。」
「え?」
「いいな?」
「え?」
するとその男は場内に響き渡らんばかりの声で叫ぶ。
「返事は「はい」だ。それ以外は認めない。いいな?」
「は……はい。」
私はあまりの恐怖に泣き始める。
「泣き止めと言っているんだ!いいか?お前はここに入ると言った。なら、泣き止め!今すぐにだ!」
私はすすり上げながら聞く。
「カールさん……ここはどこ?」
「私のことはカールさんと呼ぶな。ハイネン教官と呼べ。ため口も使うな。」
「すみません……ハイネン教官。」
すると、ハイネン教官は私に近づき、私の耳を引っ張ってこう言った。
「いいか!耳を掻っ穿って良く聞け。教官の言ったことは聞き漏らすな!返事は「はい」以外認めない!返事の時は必ず敬礼!そして、ハキハキと喋れ!」
私は恐怖からまた泣きじゃくる。
「泣くな!耐えろ。お前はここに入ると決めたのだ。この世界で生きるということはそう言うことだ。」
私は、しゃくり上げながら「はい。ハイネン教官。」と言った。
「改めて紹介する。ここは、騎士士官学校だ。国王様が慈悲と共に期待を込めて作って下さった、全寮制の学校だ。」
私は頷く。
「返事は!」
「は、はい。」
「返事が小さい!返事は短く、「はい!」だ。」
「はい!」
そう言って私は泣きそうになりながらぐっと堪える。
「ただし、騎士と言っても、剣士だけを養成しているのではない。それ以外に魔導士や召喚士も養成している。それらを纏めて、騎士と呼んでいる。」
そう言って、ハイネン教官は、「返事!」と言った。
「はい!」
「今のお前のような者は見習いだ。そして、その上に小姓、従騎士、騎士が居る。この中で騎士が教官だ。身分の低い者は上の者の言うことには逆らえない。いいな?」
「はい!」
私は怯えながら返事をする。
「あと、お前がどんな悲劇に見舞われたかは知らないが、ここではそんなものは一切関係ない。お前は騎士見習いで、国王様に仕える者の一人だ。いいな。」
「はい!」
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