第三話 「モブ」という名の仕事

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「そう言えば、彼女はまだ来ないのかな。」 そう言って秋月さんは辺りを見渡す。 「まだ来てないみてぇだな。迎えに行こうか?秋月さん。」 「うん。ありがとう。頼むよ。」 僕は「ふぅ。」と息をつき、近くにあった岩に腰かけようとする。 ルドルフさんが僕の方を見る。 僕は嫌な予感を催し、顔を背ける。 「いや、お前も来いよ。」 「い、いえ。遠慮しておきます。」 「いや、来るんだ。お前の同期になる人だぞ。」 そう言って、僕の耳元に近づき、「あと、めちゃくちゃ可愛いぞ。」と付け足した。 「いえ。僕そういうのは興味ないんで、いいです、本当に。」 僕はそう言って、後ずさりする。 そもそも誰かと話すのには興味が無いし、何より怖い。誰かと話したことがほとんどない僕に取って、その提案は迷惑なものに過ぎないのだ。 「ちっ。連れねぇ奴だな。」 そう言って、ルドルフさんは、僕に背を向ける。 「と、思ったか!」 ルドルフさんはいきなり振り返り、僕の首根っこを掴んだ。 「ちょっ!」 「行くぞ、新人!」 気が付くと僕は宙に浮いていた。正確には、全力疾走するルドルフさんに引っ張られて誘拐(・・)されていた。 「ぎゃああああああ~~!だずげでぇ~!お願いですから帰して~~~」 僕はそんな情けない声を出しながら、ルドルフさんに連れていかれたのだ。
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