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「そう言えば、彼女はまだ来ないのかな。」
そう言って秋月さんは辺りを見渡す。
「まだ来てないみてぇだな。迎えに行こうか?秋月さん。」
「うん。ありがとう。頼むよ。」
僕は「ふぅ。」と息をつき、近くにあった岩に腰かけようとする。
ルドルフさんが僕の方を見る。
僕は嫌な予感を催し、顔を背ける。
「いや、お前も来いよ。」
「い、いえ。遠慮しておきます。」
「いや、来るんだ。お前の同期になる人だぞ。」
そう言って、僕の耳元に近づき、「あと、めちゃくちゃ可愛いぞ。」と付け足した。
「いえ。僕そういうのは興味ないんで、いいです、本当に。」
僕はそう言って、後ずさりする。
そもそも誰かと話すのには興味が無いし、何より怖い。誰かと話したことがほとんどない僕に取って、その提案は迷惑なものに過ぎないのだ。
「ちっ。連れねぇ奴だな。」
そう言って、ルドルフさんは、僕に背を向ける。
「と、思ったか!」
ルドルフさんはいきなり振り返り、僕の首根っこを掴んだ。
「ちょっ!」
「行くぞ、新人!」
気が付くと僕は宙に浮いていた。正確には、全力疾走するルドルフさんに引っ張られて誘拐されていた。
「ぎゃああああああ~~!だずげでぇ~!お願いですから帰して~~~」
僕はそんな情けない声を出しながら、ルドルフさんに連れていかれたのだ。
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