第四話 舞台づくり

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第四話 舞台づくり

001. 先ほどの野営に戻ると、皆が地図を囲んで会議をしていた。 「おかえりなさい、スピカ君。それと、ようこそ、エレナちゃん。」 そう秋月さんは言って、手招きをする。 僕たちが焚き火を囲んで座り込むと、秋月さんは 「それじゃあ、私たちが何をするかの説明をしようか。」 と言って僕たちの方を向き、説明を始めた。 僕たちは基本的に毎日の生活で困ることはない。 魔法の力を用いて自然と調和した生活を送ることで、この世界の人間は十分に満ち足りた生活を送ることができているのだ。 しかしそんな僕たちにとって、脅威が一つだけ存在する。 それは「魔王」の存在である。 人類は魔王を斃すことが出来ない。 人間は魔王をどう攻撃しようと、その体に傷をつけることすら出来ないのである。 そのため人間は、魔王から攻められれば無抵抗のまま殺されるしかない。 そして魔王が飽きるまで隠れ、魔王の気が済んだらまた文明を発展させる。 その存在はまさに脅威以外の何物でもない。 そのため国は、魔王についての研究を長い間行ってきた。 人類にとっての脅威である魔王をどのように斃すことができるのか。 それは今の人間にとって最大のテーマであるのだ。 そして遂に、長い研究の結果、次元を介して異世界から死んだ人の魂を引き寄せ、この世界の人間に憑依させることで、魔王を斃すことができるということがつい最近判明した。 そのためこの脅威は、もう排除できるものだと思われていた。 しかし実際は、その予想とは異なるものだった。
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