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僕たちがこれからするのは、勇者が召喚されて最初に降り立つ場所、「はじまりの村」の中心部に存在する、大きな噴水の周辺に初期装備と基本的な資本が入った壺を散りばめ、勇者を国王が居る王都まで誘導するための道を引いておくという仕事である。
明日には勇者が噴水前で召喚されるため、それまでに前述の行程を済ませねばならないのだ。
「そういう訳で、よろしくね。二人とも。」
そう言って茜音さんは僕たちの方を向き、手をパタリと合わせる。
「じゃあ、早速で悪いんだけれど、今から私たちと一緒に仕事に行くわよ。」
僕は少し怯えながら、「あ、茜音さん。え、エレナさん。よろしくお願いします。」と言った。
「なんであんたと一緒に行かなきゃいけないのよ。もっと頼りがいのある奴がいいです、茜音さん。」
エレナさんはそう言って僕を軽蔑するように見る。
「ま、まあ。最初の仕事だし、慣れれば彼も出来るようになるわよ。」
そう茜音さんが言うと、エレナさんはあからさまに嫌そうな顔をしてそっぽを向く。
僕は気まずくなって思わず言う。
「や、やっぱりいいです。僕、ここで待っていますから、二人で行ってきてください。」
するとルドルフさんが僕たちの方を見て注意する。
「おい、新人の二人。そういうのは良くないぞ。同期の仲間なんだ。お互いに食わず嫌いするもんじゃない。」
「うんうん、そうだね。食わず嫌いはだめだよ、新入りくん。とりあえずやってみる、これが重要だよ。何事も挑戦だからね。」
そう言って、茜音さんは僕たちの手を取り、「行きましょ。」と言った。
「いってらっしゃい、お二人さん。気を付けてね。」
そう言って、背の小さい爺さん、秋月さんは僕たちの背中を押す。
「道を引く仕事は俺たちに任せな!新入りの坊主がしっかりやるか、見張りを頼むぞ、
茜姐さん!」
「その呼び方は止めてって言いましたよね、ルドルフさん!」
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