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第五話 魔法と僕とモブキャラと
001.
僕は恐る恐る周りを見渡す。
「誰かいませんか~?あの~。」
僕はその薄暗い室内を歩き回る。
蝋燭で薄気味悪く照らし出されるその部屋は、こちらへおいでおいでと言っているように思えた。
僕は恐ろしくなり、体を震わせた。
その時だった。後ろからコツコツという足音と床の軋む音が聞こえた。僕は恐怖でその場に立ち竦む。
「だ、誰か、いるんですか?」
僕は勇気を振り絞って振り返り、その音のする方を見る。
「なんだね。あたしに用かい?」
そう言って僕の方へやってきたのは腰を曲げたお婆さんだった。
僕は驚き、思わず尻餅をついた。
「あ、あの。僕。その、仕事で、来たんですけど……」
「ほう。見慣れない顔だね。誰からの紹介でここに?」
そう言って、そのお婆さんは僕の顔をまじまじと覗き込む。
「ひいっ。あ、茜音さんに。言われまして。」
すると老婆は「なるほど。茜音の差し金って訳なのね。そこにお座り。」と言って、指をパチンと鳴らす。
ガタンガタンという音と共に、部屋の軋む音が大きくなっていく。
地面が震え、足元がぐらぐらと揺れる。
僕はその様子に怯え、思わず目を瞑る。
徐々に揺れが収まり目を開けると、僕の目の前にはとてつもなく大きな部屋が蝋燭の火で映し出されていた。
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