千駒と岳

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千駒と岳

     沢良木(さわらぎ)桐吾(とうご)  幼名を千駒(せんこま)  水滸伝百八星の豪傑の一人、九紋龍・史進(ししん)の如く剣の腕が立ち、精悍な美丈夫と評判の男だった。 「ねぇ親分。この史進、國芳(くによし)のと顔が違う……女子(おなご)みたい」 「そうかい」 「でも……すごく綺麗ですよ」  背中に触れた冷たい指先。  十七の頃、最初にこの墨に口づけたのは(せん)……お前だった。
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