Ⅳ 不穏

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 使者である近衛兵一団を、北、東、西の大商人である三家の長は、上流の町の中央にある集会所で出迎えた。集会所といっても、まるで宮殿のように華美で、ドムの城と呼びならわされていた。  そこで首を垂れ、上座に立った使者から通達を聞かされた長たちの様子は三者三様だった。北の大商人の顔は見る間に青ざめ、気を失わんばかりであった。東の大商人は顔を強張らせながらも、自分の勘と行動を自賛しているようだった。西の大商人は終始無表情で、粛々と通達に聞き入っていた。  使者の読み上げが終わると、三名とも深々と平伏した。どんなに不平不満を思おうが、公式にそれを表すと、あっという間に首が飛ぶ。とりあえずは、受け入れるしかない。  ただ北の家の者は、直ちに倉庫に向かって走った。カエルムを取り上げられたら、大損だ。  しかし、そこはすでに近衛兵に抑えられていた。  こうして、ドムの人々を苦しめたカエルムと、大商人の専横は終わりを告げた。近衛兵はカエルムを全て没収すると、そのままドムの町とガザ帝国をつなぐ、カエルムの道を封鎖した。
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