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―森の中の芝生地帯―
『何の真似だ、咎人。私と静かに決着をつける気か?』
「あぁ、そうだ。今ここでオレは君を倒す。…今の君を!」
馬宙がカシマールに向かってそう言った次の瞬間、カシマールは先程からの苦痛に耐えきれず、膝から崩れ落ちるように倒れた。
「…カシマール!」
ギリギリの所で馬宙は受け止めた。そしてゆっくりと横にさせた。
『…咎人風情が何の真似だ。私と戦っている最中だぞ。』
「さっき村で言ったことは全てオレが図書館にいる魔術師から聞いた事実だ。そしてオレがこれから話すことも全てほんとのことだ。弓を構えずに最後まで聞いてほしい。」
カシマールはゆっくりと弓を地面に置き、兜越しにその青い目で馬宙を見た。
「…オレはついこの間まで記憶をなくしてたんだ。だけど、修剣学院で剣を振るうちに自然と全部思い出せたんだ。もちろん、君のことも。」
『…私のこと、ですか?』
「今から多分六年くらい前にオレと君は、ここで出会ったんだ。その時君は六頭の猟犬達に追われてたみたいだったんだ。」
『六年前…私が王都に来た頃ではないですか!』
「…それで、オレとオレの友達の陽輝で君やミリアっていう子を守るために必死こいて木剣を振ったんだよ。まぁ、助けられなかったんだけどさ。」
『…そうでしたか。続けてください。』
「君とミリアは、アリゼロスらしき人に連れていかれたんだよ。…って、兜で顔がよく見えない人に何言ってるんだって話だけどな。」
馬宙が一通り話終えると、カシマールは自分の意思で兜を外した。
その兜の下にあった顔は六年前に馬宙が見た少女と同じ顔だった。とはいえ、年が経っているのもあり、少しばかり大人びていた。
「これで…いいでしょうか?」
「!?…ほんとに君だったのか。」
~予告~
カシマール・クレセンティア、その兜の下にあった顔はあの日出会った少女と同じ顔だった。
彼女と共にピスティに戻ったオレたちが目にしたのは凄惨な状態となっていた村だった。そして彼女は…
次回〈決別の証〉
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