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瑠菜は少しずつ涙が出てきた。もうディアンは天に行ってしまうのでは と思ったからである。
「…ディアン、私の数少ない相談役でいてくれて本当にありがとう。後は任せてくださいね。」
『…………へっ、そうだな。後は任せて寝てもいいか。こんな体じゃ無理はできねぇよな。最後にこうして嬢ちゃんと喋れただけでも十分よ。ははっ』
ディアンは少しずつ意識が薄れてきていた。もうすぐこの世との別れが近づいていた。
「…ディアン、最後に一つ無理なわがままを聞いてもらってもいいですか?」
『…ああ、いいぞ。』
「…素顔を見せてください。」
ディアンはまだ自由な腕で兜をとってみせた。その素顔は銀色の髪と赤い瞳の美男子といった感じだった。
瑠菜はその顔を見てさらに涙が出てきた。しかし、声までは上げなかった。
『…………これで、満足か?』
「はい、とても満足です。後はゆっくり休んでくださいね、ディアン。」
ディアンはそのままピタリとも動かなくなった。そう…ディアンは瑠菜に看取られ、天国へいったのだった。
瑠菜は声は出さなかったが、大粒の涙を流して、しばらくその部屋から出てこなかった。
すすり泣く声を聞いた馬宙達三人はそのままそっとしておいた。
―その日の夜―
元から新太はすぐ寝る体質のため、夕食のあと、風呂から上がった数分後には爆睡していた。
陽輝も作戦会議でくったくたになってしまったこともあり、すぐ寝た。ただし、馬宙は寝付きが悪く起きるのも遅いため、起きていた。
瑠菜は、ベランダで星を見ながらディアンのことを振り返っていた。
「…瑠菜、大丈夫?何があったのかは聞かないよ」
瑠菜は感極まって馬宙に抱きついた。あまりにも唐突すぎたがゆえに馬宙は動揺してしまった。
「…少しだけこうさせてください、馬宙…くん。 」
(…瑠菜がこんな状態になるなんて、よっぽどすごいことが起きたんだな。でも、悲しいことなのかもしれない。)
「…ディアンが息を引き取ったんです。私の数少ない相談役だったんです。」
「…そうか。じゃ、ディアンの分も頑張ろうぜ、瑠菜。」
「馬宙くん…ありがとう。」
(待ってろよ…アリゼロス)
~予告~
ついにその姿を表した心なき騎士・クリスタラス。そして、決戦が始まる。
次回〈自由をかけて〉
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