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「…アリゼロス、その前に一つだけさせて欲しいことがある。」
『何だい?降参かい?』
「馬宙さん達の傷を治す時間をくれ!」
『いいだろう、戦う相手じゃないからね。』
「新太…お前、ホントにオレ達に加勢するなんて、バカだな。」
「馬宙さん達ばかりにいい格好させませんよ。スキルコマンド…ハイエストヒール!」
新太が使ったのは回復系ソウルスキルの最上級魔法〈完全回復〉だった。今の新太では発動したらほぼスキルを打てない体になってしまうほどの魔法だった。
「ありがと、アリゼロス。んじゃあ…いくぞ!」
新太は風のごとき速さでアリゼロスに向かって剣を振りかざした。しかし、アリゼロスはそれを難なく止めてみせた。
新太は風の魔法と斬撃を交互にくり出し、アリゼロスを翻弄しようとした。
『…ただの迷い子がここまで強くなってボクに牙を剥くとはねぇ…恐ろしい、恐ろしいよエメラス!』
「その名でオレを呼ぶんじゃねえ!今のオレはエメラスなんかじゃない!一ノ瀬新太っていう一人の人間だぁぁ!」
新太の一撃がアリゼロスの頬に傷をつけた。
『…なんと、このボクに傷をつけるなんて。しかし、それで思い上がるな!』
アリゼロスは新太の胸部を斜めに切り裂き、蹴り飛ばした。新太は吐血しながら壁に激突した。
壁にはもちろん新太が倒れた床にも鮮血が水溜まりのように出た。
「…新太、もういい!これはオレら二人の手で終わらせるから!」
「違う!二人だけの戦いじゃないんですよ!瑠菜さんやディアン様、ピスティやホリットの人達の戦いなんです!」
新太は血を吐きながらも剣を杖代わりに立ち上がった。
「…それに、アリゼロスはオレの上司だった人だ。なら、そんな人が起こした悪事はオレ達結晶騎士の責任だ!だから、オレは命に変えてもこの化け物を討ちます!」
新太は右目にΔの文字が浮かび上がった。彼が三人目の“運命の剣士”として覚醒した証拠だった。
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