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とある独白
大学時代、俺は音楽にのめり込みバンドマンになることを志していた。
当然のように軽音サークルに入り、仲間同士でお世辞にも上手いとはいえないギターをかき鳴らし、ライブだレコーディングだとミュージシャンの真似事に明け暮れた。
そのサークルで出会ったのが久我である。
目にかかるほど長い前髪、くわえタバコ、薄手の長袖シャツにギターケースを背負う、当時俺たちが憧れたバンドマンらしい出で立ちの男だった。
一見大人しく、会話より音楽に重きをおく男と思われがちなのだが、話してみればとても気さくで冗談ばかり言う。
見た目とのギャップも相成って、久我は出会ってすぐに俺たちのムードメーカーとなっていた。
俺たちはライブや練習のたびに“ミーティング”や“打ち上げ”と称して安居酒屋で酒を飲んだ。
熱っぽく音楽について語らうこともあれば、単位や好きな女の話で盛り上がったり、それぞれの地元の話をすることもあった。
ある時、何の理由であったか忘れたが俺と久我の二人きりで飲む機会があった。
最初こそいつものようにバカ話をして、次のライブは、次の曲はと語らっていた。
しかし何かの弾みで、久我は長い前髪をそっとかきあげたのである。
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