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アタシよりも背が高くて、少し見上げるようにその顔を見ると、ちょっとだけかっこいいな、なんてついつい思ってしまうのだ。
帰宅し、自分の部屋のベットに倒れ込むように寝そべるとアタシは枕に顔をうずめて小さく叫ぶ。
「先輩、かっこいい……! 大好きっ……」
自分のキャラとかけ離れているのはわかっているのだけど、どうしても気持ちをはきだしたかった。抑えられなかった。
好きで好きで仕方がなくて、いつでも暴走してしまいそうなのだから。
ああ、今日もかっこいいアタシで入れたかな? 先輩が好きなアタシは凛々しいアタシ、剣をふるっているときのアタシなんだから。
先輩が言ってくれた優しいく嬉しい言葉を思い出し、体も心も熱くなり、加護先輩への恋心がより燃え上がる。
「アタシの姿を今日もかっこいいって言ってくれたの超嬉しいっ、ああいう風に急にいたずらを仕掛けてきて、子供のような笑顔をするのとっても可愛いし、それなのにあんな風に守ってくれるなんて……もう……もう、ほんと大好き、加護先輩っ」
とにかく、気持ちを全部出しておかなければ、言葉にしなければ気持ちがおさまらなかった。
そうしないと、明日も剣道少女なアタシでいられる気がしないから。
剣道に生きるアタシでいないと、加護先輩はアタシのことを見てくれない。そんな気がしてしまって……怖い。きっと、そんなことはないのかもしれない。でもその可能性がゼロじゃない限り、アタシはこれからもここで、先輩への想いを吐きだし続けるのだろう。
ああ、でもいつか……遠い未来でもいいから、ただの女の子として先輩の恋人になりたいな……。
俺の家は、喫茶店だ。両親が営む小さな喫茶店。コーヒーとオムライスが売りで有名ではないもののつぶれずに二十年ちかく続けている。
アルバイトであり近所にすむお姉さんである美音さんに挨拶してカウンターに座る。
「家族用コーヒー、お願い」
「はーい」
ちょうどお客さんがいないので、コーヒーを注文した。家族用コーヒー……卸業者からおまけで貰う豆を使ったコーヒーだ。試供品だったり純粋な好意だったりするが、ころころ味が変わる。それが美味しいかどうか、どう違うのかは俺には分からなかった。
勿体ない事に、ブラックでは飲めないので砂糖とミルクを入れちゃうしね。
「今日はどうだった? 例の好きな子と進展あった?」
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