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夏のある昼のこと。
照りつける太陽の下で男の子はひとり、庭を眺めていた。
強い日差しにもめげずに、その足元で小さな生物が懸命に今を生きている。
彼は行列を作る働きアリに、追加のご褒美をあげることにした。
台所から持って来た砂糖を鷲掴みにすると、なくなりかけた山に振りかけた。
これはちょっとした罪滅ぼしだ。
少し前、庭の隅に見つけた巣に水を流し込んでたくさんのアリを溺れさせてしまったから。
そのお詫びに餌を置いてやっただけのこと。
アリがそのことに気付いたのかは彼には分からないが、ただただ砂糖を運び続ける光景に自然と頬がゆるむ。
男の子は縁側に置いてあったノートを開き、小さな生命の営みを拙い文字で綴り始めた。
夏休みの自由研究は始まったばかりだ。
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