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小さな世界
砂地を行く一行があった。
近くには森林や湖があったが、彼らは最も安全な砂地を選んで歩いているのだ。
水は恐ろしい。
住居を地下に持っているこの種族は、ほんのわずかな降雨で大洪水に見舞われることが少なくない。
毎年、雨季には多くの仲間が濁流に命を落としている。
それでも生活圏を地上に移せないのには大きな理由があった。
「それにしても、今回は収穫はなさそうだな」
隊列の中ほどを歩いていた男がぼやく。
「運が悪かったんだよ」
彼らが拠点を出発してから、もう三日になる。
これ以上探索を続ければ、帰還を待つ仲間が心配するだろう。
とはいえ一族の厳しいルールに従えば、何の手柄もなく戻れば怠け者の烙印を押されてしまう。
徹底した階級制度と役割分担。
これが敷かれているおかげで秩序が保たれ、一族は末永く生き永らえることができる。
民は生まれた時から与えられた役割を全うせよ。
これが女王陛下のお言葉だ。
「隊長!」
偵察役が戻ってきた。
「何か見つかったか?」
「白銀の山を発見しました! 調べたところ、かなり上質のようです!」
疲れ果てていた隊員たちの目がにわかに輝く。
既に体力も気力も底をつき、諦めて帰還すべきだとの声も上がっていたところだったので、この報せは彼らを大いに元気づけた。
「よくやった! すぐに案内してくれ」
偵察役に案内されて辿り着いたのは、周囲を小高い丘に囲まれた場所だった。
その向こうは天を貫くような巨木が林立していて、陽光をいくらか遮っている。
「おおっ!」
目の前には報告のとおり、宝の山があった。
陽の光を浴びて銀色に輝くそれは、宝石が堆積してできたものだ。
「素晴らしい……」
「やりましたね、隊長!」
彼らは欣快の声をあげた。
これまでの苦労が報われた瞬間だ。
未だかつて、これほどの功績を上げた仲間はいないだろう。
「こりゃ自慢できるぜ。なんだったら一生食っていけるくらいだ」
「しかしこれほど大量だと我々だけでは手が足りませんね。本部に戻り応援を呼ぶべきかと思います」
部下の進言に隊長は頷いた。
「そうだな。よし、お前たち3人は本部に戻り応援を要請するんだ。この場所を知っているのは我々だけだ。くれぐれも慎重に」
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