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七階に住んでいると言うと、何かを誤解したらしい女性に、慌てて誘いの言葉を向ける。最初はコーヒーで。
「あの……もし、嫌でなかったら、美味しいコーヒーが手に入ったんです。ご一緒にどうですか」
「え……あの、でも……どなたかは?」
やっぱり彼女は僕が結婚していると誤解したようだ。すぐに誤解を解かないと……
「寂しい独り者です。せっかくのコーヒーも相手がいないとつまらない。助けると思って付き合ってくれませんか。
あ……男一人のところだと不安ですか。それなら無理は言いませんから」
彼女に選択権を渡した。強引に誘っても意味がない。でも、女性は少し嬉しそうに返してきた。
「私、コーヒー大好きなんです。毎朝、二杯飲んじゃうくらい」
彼女の言葉に僕は内心喜んだ。自分と同じ好み。ますます逃したくない。運命の女性に、僕は笑みを向けた。
そして、慎重に自己紹介をした。まだ、本当のことは言えない。まず、警戒心を解かないと……
「僕は霧山直弥といいます。会社員です」
期待しながら僕は彼女の返事を待った。そして、女性は僕に自己紹介をしてくれた。
外は雨。でも、まるで僕たちを祝福しているように感じられた。そんな冗談のような考えが浮かぶほど嬉しかった。
雨が幸せを連れてきたのだと、僕は小さく笑みを浮かべた。
おわり
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