第一章 雨の日の出会い

10/21

3250人が本棚に入れています
本棚に追加
/330ページ
 良くないことが起こったと分かったようで、同僚は疑い深そうに頷いた。  「いいけど……」  「ありがとう。実は……私たち別れたの」  「は?」  返事ができないのは分かる。  「甘えてくる後輩がいるんだって。その子に乗り換えられちゃった」  涙は出ないけれど(つら)い気持ちはある。失恋して一週間程度なので、過去というには短すぎる。  「マジ?略奪されたってこと?」  そうなのかもしれない。近くにいる相手に対抗するのは相当難しい。  「そうなるかな……私、しっかりしてるんだって」  聞いた同僚は怒ったようだ。  「しっかりしてないと困るでしょ?子供じゃないんだから。それが乗り換えの理由?  そんなタイプだったんだ。結構、好みだったんだけどな。そういう理由で別れるなら無理。最低じゃない」  会社に来る営業の中でも、若くて爽やか系の康司は、他の女性社員に人気があった。目の前の同僚も同じだったらしい。今さら構わない。かすみの恋人でなくなったのだから……
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3250人が本棚に入れています
本棚に追加