第一章 雨の日の出会い

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 ***  次の日の朝は静かな雨で始まった。コーヒーを飲みながら、かすみはテレビを()けた。一日中、降る予報だった。  可能性はすごく低いのに、かすみは少しどきどきした。あの男性に会えるかもしれない……  傘を差して会社に行く。雨だから街は少し沈んで見える。モノクロにも見える建物の中をかすみは歩いた。  通勤の人で混んでいる列車に乗って会社の最寄り駅で降りる。かすみだけでなくて大勢の人が降りて、それぞれの会社に向かう。  ありえない期待だけれど、男性を思うと仕事を頑張れそうだった。かすみは、いつもより少しだけ張りきって仕事をした。  まるで少女みたいだと心の中で笑ってしまう。でも、恋人に捨てられたかすみには、あの男性とのほんの少しの会話が、心を温める唯一のものだった。  仕事は少し残業になった。一日中、雨だったので空気が湿り気を帯びている。今までは好きではなかった。髪のまとまりは悪くなるし、靴を選ぶのも大変。でも、今は嫌いではなくなった。雨のような雰囲気の男性を知ったから。  今日は康司はいない。当たり前だけれど、かすみは安心した。なので、駅へと向かって帰りの列車に乗った。マンションのある街の駅で降りて、そのままスーパーに入った。  エコバッグと傘をそれぞれの手に持ってかすみは歩いた。でも、マンションの前まで来るとかすみは凍った。
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