第一章 雨の日の出会い

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 「あの……もし、嫌でなかったら、美味しいコーヒーが手に入ったんです。ご一緒にどうですか」  「え……あの、でも……どなたかは?」  男性は笑った。  「寂しい独り者です。せっかくのコーヒーも相手がいないとつまらない。助けると思って付き合ってくれませんか。  あ……男一人のところだと不安ですか。それなら無理は言いませんから」  男性は独身。かすみの心が一気に浮き立った。確かに男性と二人きりというのは、少し不安がないわけではないけれど、下心があるなら、隠して誘ってくるはず。  かすみは笑顔で頷いた。自分の勘を信じようと思った。  「私、コーヒー大好きなんです。毎朝、二杯飲んじゃうくらい」  その言葉に男性は笑った。優しく見える笑みに、かすみの心は温かくなった。  「僕は霧山(きりやま)直弥(なおや)といいます。会社員です」  男性の名前を知った。嬉しくなったかすみは笑顔で返した。
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